ポケモンカードで勝ちたい!強くなりたい!そう思っている人は多いでしょう。
しかし一方で、勝っている人の練習量や経験値を考えると、自分にはそこまでポケモンカードに練習時間をかけることができない…。そう思っている社会人の方も多いのではないでしょうか。
今回は、交流イベントにも出つつ、自身もイベント主催者であるという状況で1月のシティリーグで優勝された西野ラウスさんにインタビューをしてきました。
デッキ選択の考え方や時間の使いかたなど、多忙な社会人プレイヤーにとって非常にためになるお話でした!
西野ラウス(@raus_v_p)
約9年前、ポケモンBWの対戦動画の実況者、ニコ生主として生放送を配信。
XY6エメラルドブレイクからポケモンカードを始める。初心者のためのポケモンカードのイベント『みんポケカ!』を主催。
―—本日はよろしくお願いいたします!
西野ラウス(以下ラウス) よろしくお願いします。
―—私は「みんポケカ!」※1でラウスさんと初めて会いました。
それまでにイベントを開いていたことはあったんですか?
ラウス そうですね。
もともとゲーム(以下VG)のポケモンを一緒にやっている仲間は多かったので、「ポケカはこっちで用意するから一緒に対戦しよう」というイベントを開きました。それが2016年9月に行った「初心者のためのポケカ対戦会」というイベントです。
その後「みんポケカ!」を開き、私自身も2017年あたりからポケモンカードの公認自主イベントにも出るようになり、交友関係も広がり気づいたら今、という感じですね。
※1 みんポケカ!…2017年3月に第一回が開催された、ラウスさんが主催のポケモンカードのオフ会。主催がハーフデッキを多数用意し、参加者は手ぶらで参加することができた。
勝つことの目的は『初心者向けイベントを開くこと』
―—渋谷会などの交流メインのイベントに出られているイメージが強いですが、普段ジムバトルなどには出られているんですか?
ラウス 最初に出たのが、みんポケカを開く時ですね。ポケモンカードのイベントを開くならジムバトルくらい出ておくかという気持ちで行きました。
頻度はかなりまちまちで、週に一度はジムバトルに行きたいとは思っているんですけど、忙しくていけていない週もあるというのが実情です。
他には『一軒目ポケカ』や『渋谷会』などの自主イベントに参加はしていますが、それはポケカを練習しにいっているというよりも交流をしにいっているという面が強いです。
―—あまり普段はそこまで毎日練習しているわけではないんですね。
ラウス そうですね。
ただ、大会前の土日は2~3週間から練習会に参加するようにしています。
―—シティリーグや大型大会には基本的に出ていますよね。そこに出る目的は何ですか。
ラウス WCSに出たいというのが今の目標です。
―—それはなぜですか。
ラウス 最終的な目的は、ポケモンカードを始めたい人に『初心者向けのイベント』を開くということです。
その主催者が、ちゃんとした実績があるほうが教わる側にとっても良いと思うんですよね。なので今の目標はWCSに出場することです。
―—勝つことが最終目的ではないんですね。
ラウス 勝つこと以外の目的が大事だと思っています。
仕事の目的がお金じゃない、という考えと似ていますが、
何のために勝ちたいのかという、最終的な目的をもつことが大事だと思っています。
デッキの決め方。クワガノンという選択。
―—1/20のシティリーグで優勝されました。その時の話を聞かせて下さい。
クワガノンに決めたのはいつだったんですか。
ラウス 6日前です。
優勝レシピ。同系のデッキに強くするためHP70のアゴジムシが入っているなどの細かい工夫がある。
―—基本的にいつもそのくらいの間隔で決めるんですか?
ラウス いや、今回はかなり例外です。
実は大会前にインフルエンザにかかりまして(笑)
いつもは2週間前までに3つか4つで悩んで、1週間前に2つに絞って、前日あたりに1つに絞ることが多いです。
―—デッキ選択の経緯について詳しく聞きたいと思っています。
ラウス まず、勝ってる人はみんなやっている考え方だと思うんですけど、環境にどんなデッキが多いか考えます。
今回の場合は絶対ピカチュウ&ゼクロム(以下ピカゼク)に強いデッキであることが一番大事だと思っていました。
これはVG(ゲーム機のポケモン対戦)的な考え方かもしれないんですけど、基本的にはポケモンカードは、不利なデッキでも事前のデッキ構築や立ち回りで覆せることが多いんです。
でもたまに、そういった小手先の対策ではなく、デッキ全体で対策しないと倒せないほど強いデッキタイプというのがあります。
VGがわかる方ならXYの時のメガガルーラをイメージしてもらうとわかると思うんですが、それに匹敵する強さなのが今回のピカゼクだと思いました。
それに対して強いと思ったのがこのクワガノンGXというカードです。
―—当日の環境では、同じクワガノンデッキでも非GXのクワガノンをメインとしたデッキタイプが多かったですね。
はい。クワガノンGXはちょうでんじほうの180というダメージが非常に優秀で、こだわりハチマキ+エレキパワー、もしくはエレキパワー2枚で、ピカゼクの240というダメージを出すことができます。
そして、次に多いと予想していたウルトラネクロズマGXも、こだわりハチマキかエレキパワー1枚で倒すことができます。
(左)クワガノンGXはエネルギー拘束が緩く、HPが高い(右)非GXクワガノンはサイドを1枚しかとられない代わりに、エネルギーの縛りが大きい
他に2つ候補があったんですが、インフルエンザにかかったため検証している時間がなく、以前に使ったことがあり使用感がなんとなくわかるクワガノンを選択しました。
もともとHPやダメージなど高いポテンシャルを持っているとは思っていて、エネルギー拘束が重いことだけが弱点だったのですが、デンヂムシの登場でそこが強化されて一気に強くなったデッキタイプだと思います。
デッキの実物を持ってきてくれたラウスさん
―—今回は、環境で目立って強いデッキタイプがあったから、それに強く出られるデッキを選んだという感じですね。
このデッキはこれからの環境では勝てるとも思いますか。
ラウス 正直厳しいと思います。
このデッキは勝ち筋を一つに絞っている分、対策されるととても弱いからです。
具体的には、スレッジハンマーのマッシブーンですね。
これが1枚でも入ってるデッキにはかなり苦戦します。そこまで器用にサイドカードを調整できないので。
1週間後のシティでもマッシブーン入りのデッキが増えていた印象があります。
クワガノンGXはピカゼクの対策がそのまま刺さるというのが大きな弱点で、そうなるとこのデッキで勝ち続けることは難しいのかなと思います。
―—そうなんですね…。
ラウス でもこのデッキは初心者に結構向いているデッキだと思っています。
―—それはなぜですか?
ラウス 序盤、中盤、終盤、の中で中盤と終盤の動きがほとんど変わらないからです。
サイドカードを基本的にすべてクワガノンGXのちょうでんじほうで取っていくので、相手に合わせてプレイングを変える必要がないんです。
当日の決勝トーナメントも、ベスト8、ベスト4で両方とも私の卓が一番早く終わりました。
このデッキをつくった時も本番であまり動きを迷わないということを重視していました。
シティリーグや大型大会では一日に何戦も戦うので、本番で動きを迷わないようなデッキを組むというのも重要だと思います。
もうCLで優勝できるようなデッキではないと思いますが、初心者の方なんかは特に、相手に合わせて様々な動きを要求されるデッキよりも、どの相手に対しても自分のデッキのプランを忠実に行って勝つというデッキの方がおすすめです。
それで勝つという体験を積み重ねていってほしいですね。
みんなの協力で完成したCL新潟のブースター
ラウス デッキ選択の仕方ですごく自分らしいと思っているのが、CL新潟のブースターデッキです。
―—ブースターデッキはそこまで環境でメジャーなデッキではありませんでしたよね。
ラウス そうですね。そういう環境においてブースターGXを握った経緯が、すごく自分らしいデッキ選択の方法だったと思います。
チャンピオンズリーグ新潟 エクストラ(オープン)
使用デッキ:ブースターGX
19位(5-2)TOP16見ると有利ばっかりなので、決勝進めなかったのがめっっっちゃ悔しいですが
素敵なデッキで戦えたことは満足。 pic.twitter.com/L0Wbg4p8HE— 西野ラウス (@raus_v_p) 2018年12月2日
その時のエクストラは各地のシティリーグでオーロットが結果を残していた。そのため多くの人がオーロットを意識し、ロックされる前に盤面をつくってしまうデッキが増えた。当日最も多く勝ち進んだのはレックウザだった。
まず、新潟に向けて友人と練習をしていた時に、バシャーモGXのデッキと対戦しました。その時意外に炎って強いんじゃないかという気付きを得ました。
その後、本厚木のトレーナーズリーグでも、ジュニアの子にエクストラでズガドーンアーゴヨンが強いという情報をもらいました。
それらをヒントに炎タイプの構築を研究していきました。
デッキの戦略のベースは、1年前にシティリーグで優勝したみやたさんのボルケニオンバクガメスのコンセプトを完全に踏襲しています。
―—結構色々な人が絡んでいますね。
そのあとに一軒目ポケカの方々や一緒にイベント主催をしているメンバーと調整をし、summitさんとたくさん練習した結果、後攻からでもオーロットに絶対負けない構築ができました。
イーブイGXがオーロットに強いんです。イーブイだけだと、エーフィEXのミラクルシャインで一斉にやられてしまうんですが、イーブイGXは退化させられてもHPが高く、特性で全回復することもできるので。
(左)ブースターGX。鍛冶屋があるため3エネワザをつかいやすく、HP180のレックウザに強い。(右)イーブイGX。HPが高いため、ブースターGXを退化させられても気絶しない。また特性により進化するときに全回復できる。
―—なるほど!それは強い。結果はどうだったんですか。
ラウス レックウザGXのデッキに何度も当たり、勝てたので5勝2敗でした。
その時のレックウザは、オーロットやオカルトマニアで機能停止しないように1ターン目から全力で展開するというコンセプトばかりでした。
なので、レックウザGXを2体倒してしまうとブースターGXを倒す打点がなくなりほとんどのケースで勝つことができます。
―—オーロットに圧倒的に強く、レックウザにもかなり戦えるデッキだったということですね。
お互いの価値観を混ぜていくことで強くなる
ラウス このデッキが自分らしいと思っているのは、色々な人が関わってできたデッキだということです。
多くの方からヒントをもらい、多くの人に練習相手になっていただくことでできたデッキです。私がそういったことができるというのは、いろいろなイベントに参加して交流をしたり、自分でイベントを主催することで知り合いを増やしているおかげかなと思っています。
―—練習相手はいつもどうやって決めているんですか。
ラウス 大会の実績や強さでは選ばないようにしています。
むしろ大会に出ていない人と関わっていることも多いですね。
―—それはなぜですか。
ラウス 強い人たちの考え方は大会の結果などに表れてくるので、みんなが見られるところにあるんですよね。
そして、大勢がその考え方を参考にして、それを中心に環境ができてきます。
それを見ているだけでは他の大勢と同じになってしまうので、上回るためには大会結果に出てこないアイデアを拾う必要があると思っています。
―—具体的に、取り入れたアイデアをもとに、どのようにデッキを決めているんですか。
ラウス みんなのアイデアを参考にするのは、デッキの選択肢を広げる部分です。
いろいろな人のアイデアでまず自分の視野を広げる。そこからは自分の経験や考え方、感性で絞っていく、
そこからデッキが絞れて来たら、また採用するカードの選択肢もアイデアをもらい、絞っていく。そんな感じだと思います。
広げるのは仲間、絞るのは自分です。
―—逆に固定されたメンバーでチームを作り、ひたすら練習するという方法もありますよね。
それに関してはどう思いますか。
ラウス もちろんこれまで結果を出してきた方はそういった方が多いですし、単純に経験値が高いので大会でも常に勝っている印象があります。
でも最近のビジネスのやり方も、企業と企業だけじゃなく、個人と個人がつながりあって、つくりたいものをつくって解散するという流れが主流になってきているじゃないですか。
ポケモンカードでもそういう考え方が強くなってもおかしくないと思っています。
なので今言ったように新潟でもいろいろな人の意見を参考にデッキを組みましたし、シティリーグのクワガノンをつくった時も全く別の人の意見を多く参考にしています。
―—それがラウスさんの強さの秘訣なんですね。
はい。私の強さの秘密は足ですね。フットワーク。
―—各所のイベントに出ているのにはそういう理由もあったんですね。
そういう意味だと、ヤナトイナイトバトルにも積極的に参加しようと思っていて。ああいう面白いアイデアのあるイベントに対して「ただ面白いだけじゃん」と思うのではなく、取り入れられるアイデアはないかと真剣に見ることでヒントがたくさんあると思います。
―—ありがとうございます!そういっていただけると主催冥利につきます!
ラウス なので、今チームに入っておらず個人で練習している方、初心者の方で強くなりたい方に、どうすれば強くなるのかというアドバイスをするなら、
普段からいろいろな場所に顔を出して、いろいろな素敵な人と出会い、意見を話し合い、お互いに価値観を混ぜていくことを私はおすすめします。
そのうえで、アイデアをもらっているだけじゃダメなので、自分もアイデアを提供していく。
自分が日ごろからいろいろな人の価値観を取り入れていれば、別の人にアドバイスする時もその人の役に立つことができますよね。
そういうギブ&テイクができる関係を増やしていくことが強くなる方法だと思っています。
―—たしかに。ラウスさんが他の人に教えているシーンもよく見るので説得力があります!
ラウス また、こういう過程を踏むことの利点としてはもう一つ。疑似的な味方が増えるんですよね。
いろいろな人が関わってくることで、だんだんと負けられないなって気持ちになってくるので練習も集中できます。
―—モチベーションの向上にもなるんですね!
後半へ続く
周りの人との関係を非常に大切にされるラウスさん。先日お会いした時もデッキアイデアを借りた人にお礼を直接伝えられていたのが非常に印象に残っています。
さて、ラウスさんの優勝の1か月前に、同じくVG出身でオフの主催もされているsummitさんがシティリーグで優勝されました。
後半では一緒に練習している二人がなぜ優勝できたのか、VGとポケカの関係性について聞いてみます。
また、ラウスさんが将棋から取り入れている考え方とは。