はじめまして。なにものかと申します。

この度、2019年3月1日(金)発売予定の拡張パック「ダブルブレイズ」に収録される「火打石」を採用した新しいレシピを考案しました。この「火打石」は、イラストの見た目が弁当に見えるということから、発売前から大きな話題となっている1枚です。是非多くの方の参考にしていただければと思い、たいあたりジムさんに寄稿させていただきます。

本稿では、「火打石」弁当の材料と加工手順を中心とし、補足的に構築経緯や考え方等もご説明いたします。尚、対象読者としては料理経験者を想定しておりますので、その点はご理解いただけますと幸いです。

自己紹介
ポケモンカードは発売当初より嗜んでおり、プレイ歴は22年程になります。直近のシーズンの成績は下記の通りです。
・チャンピオンズリーグ2019東京 スタンダード/マスターリーグ 予選:1-3(自動ドロップ)
・チャンピオンズリーグ2019新潟 スタンダード/マスターリーグ 予選:3-2-1(576位)
・チャンピオンズリーグ2019千葉 エクストラ/オープンリーグ 予選:5-2(31位) 決勝:0-1(ベスト32)

【火打石弁当】

(ビーフステーキ/ポークソテー/鶏と茄子の煮物/玉子焼き/米飯)

オリジナルの「火打石」を高い再現度で構築することを意識しつつも、大前提となる料理としての満足度、そして弁当としての機能性を優先しました。牛・豚・鶏の3大食肉をメインに据えた和風寄りの構築となっており、経験者であれば比較的プレイングは難しくなく、事故も起こりにくい部類だと思います。

肉料理3品と玉子料理1品、そして米飯というモジュールで構成されています。ゲームプランとしてはモジュール毎に完成させたものを最終的な形に組み立てればよいので、プレイングのスピードはさほど重要ではないです。そのため、レシピもパーツ毎に記しますので、最終的なボードの完成形は写真を参考にしてください。素材レベルでの配分についても環境に依存する部分が大きいかと思いますので、各自で調整をお願いいたします。

【ビーフステーキ】

一般的なビーフステーキです。まず、素材の選定の段階で重視して欲しい条件が2つあります。

条件1.大きさ(塊としての存在感を出すため)
条件2.柔らかさ(弁当という性質上ナイフとフォークが使用できず、歯で噛み切ることが前提となるため))

即ち、大きくて柔らかい肉ということで要求コストがそこそこ高いです。コストの軽いローストビーフ用の赤身肉等は想像以上に固い場合があるのでご注意ください。また、焼きあがった塊をそのまま運用することになるため、焼き加減の確認が難しいです。ステーキのプレイングについては、予め単体で実践して経験を積んでおかれることを推奨します。

参考:ステーキの上手な焼き方(オージー・ビーフ公式サイト)

  • [材料]
  • ・牛肉(赤身ブロック。できるだけ柔らかいもの)
  • ・塩
  • ・ブラックペッパー
  • ・食用油(なたね油等)
  1. [工程]
  2. 牛肉を冷蔵庫から出して放置し、室温に戻す
  3. 「火打石」の写真を参考に、牛肉をカットする
  4. フライパンに油を引き、強火で熱する
  5. 牛肉の表面に塩・ブラックペッパーをまぶす
  6. トングなどで牛肉を掴み、1面ずつフライパンに押し付けて表面を焼き固める
  7. 火力を中火に下げ、肉を転がして平均的に熱を通す
  8. キッチンペーパーで包み、しばらく放置して温度を下げながら水分を吸い取る

【ポークソテー】

ポークソテーは特に変わった部分のない構築です。豚の生姜焼きから生姜焼き要素を抜いて塩味方向に調整を加えたもの、と捉えるとよいかもしれません。

  • [材料]
  • ・豚肉(ロース)
  • ・塩
  • ・酒(清酒)
  1. [工程]
  2. フライパンに油を引き、強火で熱する
  3. 豚肉の表面に塩をまぶす
  4. フライパンを中火に熱し、両面を焼く
  5. 酒を振り掛けて、強火で熱する
  6. 「火打石」の写真を参考に、短冊状に切る
  7. キッチンペーパーで包み、しばらく放置して温度を下げながら水分を吸い取る

【鶏と茄子の煮物】

鶏肉と茄子を和風の煮物のフォーマットに沿って構築したものです。マッチアップによってはみりんや砂糖等の甘味要素をタッチで投入すると有効かもしれません。

  • [材料]
  • ・鶏もも肉
  • ・茄子
  • ・ごま油
  • ・白だし
  • ・醤油
  • ・酒(清酒)
  • ・水
  • ・葱
  1. [工程]
  2. 茄子を縦に4等分し、更に乱切りにする
  3. 鶏肉をぶつ切りにする
  4. 鍋にごま油を引き、中火で熱する
  5. 手順1の茄子を投入し、塩を振って皮の色が茶色くなるまで軽く炒める
  6. 手順2の鶏肉を投入し、表面の色が変わるまで軽く炒める
  7. 被るくらいの水・酒・白だしを投入し、味を調えながら茄子が少し柔らかくなるまで煮る
  8. 煮込みが完了したものをキッチンペーパーに包んで水分を切る
  9. フライパンに水を張って湯を沸かして塩をひとつまみ加え、葱をしんなりするまで煮る
  10. 葱を弁当箱の幅に合わせてカットする

【玉子焼き】

これについてはあまり説明が必要ないかと思います。ただし、一般的な玉子焼きの工程だと側面が渦になってしまうため、筒状に丸めるのではなく、プレゼントを包装するときのように中心に向かって丸く包み込んでいくと再現度を高められるかと思います。

  • [材料]
  • ・卵
  • ・白だし
  • ・醤油
  • ・なたね油(なたね油など)
  1. [工程]
  2. 卵を割り、醤油と白だしを入れてかき混ぜる
  3. フライパンに油を引き、中火で熱する
  4. 手順1の卵をフライパンに投入し、薄く広げて巻く
  5. 焼きあがったものを弁当箱の深さに合わせてカットする

【米】

これについては基礎の範疇かと思いますので、解説は省略します。強いて言えば、全体が「丼」の構造になっていて他のパーツから水分面で若干の影響を受けるため、普段より若干硬めに調整しておくのがよいかと思います。

  • [材料]
  • ・米
  • ・水
  1. [工程]
  2. 省略します。

●構築経緯

以降、今回の構築の完成までの経緯をご説明します。直接的に役に立つ情報ではありませんが、読むとより深く理解できると思いますので、興味のある方はどうぞ。

1.コンセプト確立

レシピの構築にはコンセプトが必要です。今回は「火打石」のイラストを再現するというのがコンセプトです。

2.環境考察

まずは「火打石」のイラストを観察し、構成要素を分析してキーワードと共にピックアップします。

・黒い火打石(大きい、鋭い、光沢)
・長い火打石(細長い、ザラザラ)
・細かい石(灰色、細かい、ゴツゴツ)
・黄色い石(丸い、ゴツゴツ)
・緑の光(薄い、細長い)
・箱(緑色、長方形)

前提となる「火打石」についての知識が不足しているので、その調査から入ります。「火打石」で検索をかけた結果、「火打石」とは「火打石式発火法」に用いられる石の総称であり、種類が複数あることがわかりました。それぞれの石の名前で更に検索をかけた結果、ポケカの「火打石」に描かれているのは、「黒曜石」と「黄鉄鉱」であると推定できました。

3.構築

ところで、「火打石」のイラストのメインである黒曜石を見たときに弁当を連想した人たちが最初にイメージする料理、それは海苔で包んだおにぎり、即ち「おにぎり&海苔 TAG TEAM GX」だと思います。しかし、僕はこれを採用しませんでした。その理由は2つあります。

1つ目は、おにぎり&海苔 TAG TEAM GXは、黒曜石の「硬さ」「鋭さ」を表現できないこと。

2つ目は、おにぎり&海苔 TAG TEAM GXを弁当として構築した際、他のパーツの水分の影響を受けるというマイナスシナジーによって、手を汚さずに食べられるというおにぎりとしての機能を失ってしまうこと。

例えばウルネクデッキでミラー対策にアブソルを採用してもカラマネロとベンチのスペースを食い合ってしまうように、単体性能ではなく全体の、特に隣接するパーツとマイナスシナジーが発生しないことが重要なのです。

よって、「色が黒い」「水分の影響を受けにくい固体である」という条件で考えた結果、「ビーフステーキ」を採用することにしました。黒さは多少犠牲になりますが、カットすることでかなり近い形状を実現することができます。あるいは「煮こごり」等であればよりよく黒曜石を再現できたかもしれませんが、自分の好みではなかったので採用に至りませんでした。

次に、黒曜石の隣に配置する黄鉄鉱の材料を選定します。ここはメイラード反応でお馴染みの薄茶色をした細長い物体ということで再現できそうな素材がいくらでも思いつきますし、正直なんでもよかったです。しかし、後述する通り下の砂利の再現に鶏肉を採用することを決定したため、牛・鶏・鶏よりも牛・豚・鶏という構成の方がバランスがよいと感じ、豚肉方向で検討することに。部位については整形しやすいロース肉、調理法は単純にソテー。ここで「ポークソテー」の決定です。

そして、下に敷く砂利の材料の検討に入ります。実は、ここはかなり迷った部分でした。黄土色のものと灰色のものが混在しているのですが、灰色の食材というものがまず少ないです。砂利の下に配置する米とのシナジーも考慮すると、コンニャクや里芋などの植物性のものでなく、できれば動物性蛋白質カテゴリのものを採用したいところです。ジャコ天やイワシつみれ等は手っ取り早いですが、まだシナジーが薄い。鶏ミンチとそれに黒ゴマを混ぜたものの2パターンで行くか、とも考えたのですが、ここで名案が。茄子を水で煮ると、身は水分を吸って灰色がかり、皮は熱でアントシアニンが飛んで灰色っぽく変色する、というのを思い出しました。こうして、動物系と植物系の食材のハイブリッド構築「鶏と茄子の煮物」のアイデアが完成したのです。

味付けは全て、塩または薄い醤油味としました。同系統の味とすることで、全体のバランスに考慮した形です。

残りは簡単です。細かいパーツは単純に色と形の連想ゲームで、右上の黄色い石(正確には黄色い光を浴びている石)には玉子焼きを、緑の光には塩茹でした葱を採用。あとはイラストに沿って組み上げるだけです。

伝えたいことを纏めると主に以下の2点です。

1.観察と分析と調査によって必要な要素をピックアップする
2.単体性能だけではなく全体のシナジーを考慮する

以上、長々と述べさせていただきましたが、新たなレシピの開発のお役に立つことができれば幸いです。